良い一カットの後に、修正依頼が来る

商品紹介の短い動画を作る。 生成した映像はきれいで、企画会議でも好評だった。 ところが、背景だけを明るくしたいと言われて作り直すと、商品ラベルや容器の形まで変わってしまう。 これは制作工程を考えるための想定例だが、動画生成AIを選ぶ際の問いをよく表す。 最初の映像が良いことと、残したい部分を保って直せることは違う。

本稿では、2026年3月28日までのOpenAI、Google、Adobe、Runway、Lumaの公表資料を、参照素材、音声、既存映像の変更、編集への引き渡しから比較する。 機能と制約の比較であり、画質や制作速度の実測順位ではない。 私の判断は、採用できる修正版までを一つの仕事として評価すべきだ、というものだ。

商品画像を選ぶ人、動きを作る人、台詞や表示を確認する人は、違う条件を守りたい。 生成が速くなっても、変更のたびに全員が確認し直すなら、制作は同じ割合では速くならない。 何を変え、何を残し、誰が確認するかから、必要な道具を考えたい。

生成の仕組みと、制作での修正は分けて読む

OpenAIの2024年のSora技術報告は、映像を圧縮して時間と空間の小さなまとまりへ分け、ノイズを含む入力から映像を復元するモデルを説明する。 動画では、一枚の見栄えに加え、時間が進んでも物体や動きがつながることを扱う必要がある。 ただし、モデルが内部で映像を整える工程は、制作者が「背景だけ」を直せる操作と同じではない。

RunwayのGen-4.5発表も、動きや一貫性の改善を説明する一方、原因より先に結果が起きる、物体が途中で消えるなどの制約を挙げる。 これらの説明から、全製品の内部方式や修正の成功率を推定することはできない。 想定の商品動画なら、見えている容器が手に隠れた後も同じ形で現れるか、持ち上げる動作の前後がつながるかを、クリップ全体で確認する。

参照画像で外見を指定すること、カットの途中で外見が保たれること、次のカットでも同じ商品になることは、別々の確認項目だ。 「一貫性」という一語でまとめると、制作で必要な精度が見えなくなる。 どの時間、どの細部を保つかまで条件を決めたい。

参照素材は、毎回説明し直す負担を減らせるか

Runway Gen-4の発表は、視覚的な参照と指示を組み合わせ、被写体、場所、表現をそろえる方法を示す。 想定例で同じ商品の三つのカットを作るなら、形や色を文章だけで毎回説明する代わりに、共通の素材を渡す理由がある。 ただし、参照の機能があることは、ラベルの文字や寸法まで必ず一致するという保証ではない。

版と操作もそろえる必要がある。 Runwayの変更履歴では、Gen-4.5への最初のフレーム画像の入力が2026年1月21日に記されている。 上位モデルが公開された時点で、既存モデルの全制御が使えたと考えてはいけない。 モデル名に加え、画像からの生成、参照、キーフレームなど、試す操作を記録したい。

背景を変えた修正版では、変更してほしい明るさと、変更してほしくない商品の形、色、表示を別に判定する。 素材を渡したことで再入力は減ったか、細部の補修は残るかを見る。 参照入力の価値は、単に似た映像が出ることに加え、制作側が保持条件を伝えて確かめやすくなる点にある。

音声と縦横の形式も、修正の単位になる

Googleの2025年10月のVeo 3.1とFlowの更新は、参照素材、最初と最後の画像、クリップの延長を使う生成へ音声を加える機能を説明する。 これらは実験的な機能として案内されている。 環境音と台詞を映像と一緒に作れれば、場面の雰囲気を確認する試作に使う理由がある。

一方、台詞の数字だけを直したいとき、映像を残せるかは別に試す必要がある。 音声をまとめて生成できることから、独立して差し替えられるとは言えない。 台詞、口の動き、商品の持ち方のどこまで変わったかを比較し、録音や通常の編集で直す方法とも比べる。

2026年1月の更新では、参照素材からの縦型9:16出力と、1080p・4Kへの拡大も説明された。 縦型で生成することと、解像度を拡大することは違う操作で、拡大の提供先もFlow、API、Vertex AIに限定されている。 横型の映像を後で切り抜くと商品が欠ける想定なら、縦型を最初から作る条件と、複数形式で同じ商品を保つ条件を分けて評価したい。

既存の演技を残し、見た目を変える

ゼロから動きを生成する以外に、手元の映像を変更する道がある。 LumaのRay3 Modifyの発表は、元の演技を使い、衣装、環境、照明などを変える動画から動画への操作と、キーフレーム、人物の参照を説明する。 想定例で商品の持ち上げ方を先に撮影できるなら、そのタイミングを入力として残す方法が比較対象になる。

ただし、元の動きを使うことから、すべての細部が維持されるとは限らない。 告知も変更の強さを調整することや、入力の画面比による切り抜きで品質が下がる場合を挙げる。 手や商品が隠れる瞬間、背景との境界、撮影した動作の長さを確認したい。

Ray3.14の発表は、720pでRay3に対して4倍速く、3倍低コストとする比較を示す。 これはベンダーの条件付きの説明で、採用できる修正版を得るまでの総費用を測った結果ではない。 また、発売時のユーザーガイドは、人物の一貫性を指定する機能や参照画像への未対応を明記する。 Ray3系という名前だけで、別の版にある機能をまとめて扱わないことが大切だ。

生成、部分変更、延長、組み立てを分ける

Adobeが2025年4月に一般提供を発表したPremiere ProのGenerative Extendは、既存の動画や音声の長さを補う機能である。 良い表情を少し長く残したい、編集のつなぎに数フレーム足りない、といった仕事は、新しい場面を丸ごと作る仕事と違う。

12月のFireflyの更新は、RunwayのAlephを使った文章による既存クリップの変更と、複数トラックを扱うブラウザー動画編集の公開ベータを説明する。 Fireflyという製品名の中にも、Adobeのモデル、他社モデル、編集画面が含まれる。 ブランド名だけを並べると、どの機能と利用条件を比較しているかが曖昧になる。

新しいカットを作る

参照素材や指示から、まだない場面を作る。企画の動きや構図を見せる目的と、商品を正確に見せる目的で、採用条件を分ける。

既存カットを変更する

背景や衣装を変え、元の動きや被写体を残したい。頼んだ変更と、頼んでいない部分の変化を同時に確認する。

足りない長さを補う

つなぎや余韻に必要なフレーム、環境音を補う。元の映像との境界と、延ばした部分で起きる変化を確認する。

制作物へ組み込む

採用カットを切り、台詞、文字、音楽と合わせる。書き出し後に再編集できるか、確認者が正しい版を見られるかを確かめる。

この区分は本稿の制作課題の整理だ。 一つの製品が複数を扱う場合もあり、四つの製品を買う提案ではない。 どこで仕事が詰まるかが分かれば、生成器の追加より通常の編集が適切な場合も判断できる。

継続して使えるかも、制作の条件に入る

OpenAIのSora 2の発表は、映像と音声の生成に加え、利用者の姿や声を取り込む共有・制作体験を示した。 こうしたモデルの機能と、そのモデルを使う製品の提供は分けて読む必要がある。 Soraの公式アカウントは3月24日、アプリを終了する方針を伝え、アプリとAPIの今後の時期は改めて案内すると述べた。

本稿の対象日は3月28日なので、後から決まった終了日をこの時点の情報として扱わない。 それでも、終了方針が示された製品を、継続提供が確認済みの新規導入先として薦めることはできない。 保存した素材を他の編集環境で使えるか、参照素材と指示を引き継げるかも、制作の選択条件になる。

モデルが良い映像を作ることと、制作チームが同じ案件を来月も修正できることは違う。 提供の変更で素材を失ったり、修正を再現できなくなったりすれば、その移行作業も制作の負担になる。 生成機能とともに、素材の保存と編集への引き渡しを確かめたい。

使える素材であることと、来歴が分かること

AdobeのFirefly Video Modelの発表は、許諾を得た素材やパブリックドメインの素材での訓練と、出力へのContent Credentialsの付与を説明する。 商用利用に適した設計という位置付けはAdobeの説明であり、本稿が個別の制作物の使用可否を保証するものではない。 他社モデルをFirefly内で選んだ場合にも、同じ訓練素材や条件が適用されるとは推定できない。

OpenAIのSoraの安全対策の説明も、人物の姿や声を扱う同意の仕組みと、生成物の来歴情報を区別している。 来歴を示す情報があることから、入力した人物、ロゴ、商品画像の利用条件が満たされたとは言えない。 制作側では、渡す素材の条件を確かめた上で、書き出しや共有の後にも必要な表示が残るかを見る。

想定の商品動画では、正しいラベルを表示することと、使える商品画像から作ることの両方が要る。 公開直前に問題を見つけて作り直す負担を避けるためにも、素材を選ぶ段階から確認者を決めたい。 これは制作工程の提案であり、法律上の判断を代行するものではない。

採用できる修正版までの仕事を比較する

試験では、同じ商品画像、長さ、画面比を使って短いカットを作り、次に背景の明るさだけを変える。 商品の形、色、表示と、動きや台詞の保持条件を先に決める。 機能が違って同じ入力を使えない場合は、その不足を記録し、別の課題の結果と混ぜない。

一番良かったクリップだけを残すと、何回捨て、何回直したかが見えなくなる。 同じ予算や試行回数の上限で複数回試し、不採用も含めて記録したい。 生成待ちの時間、編集者の補修、確認者の見直し、最終版の組み立てまで見る。 既存素材を通常の編集で直す場合とも比べれば、生成単価と制作全体の作業量を分けて判断できる。

企画会議で動きの方向を伝える素材と、正確な商品表示が必要な公開素材では、選択が変わる。 前者ではラフな映像でも意思を合わせられる場合があり、後者では撮影や合成を残す方が条件を満たしやすい場合もある。 どの製品が常に最適かではなく、必要な条件を満たして、次の修正を受けられるかを確かめる。

ここで挙げた試験は提案であり、各社の製品で時間短縮を実測した結果ではない。 動画生成AIの進歩を制作の価値へ変えるには、案を作る速さに加えて、選んだ案を直して使い続ける仕事を見る必要がある。 生成した瞬間より、その後の修正を引き受けられるかを選択の中心に置きたい。