「続きから」のために、何が残っていればよいか
AIに調査報告を任せ、途中で実行環境が停止したとする。 会話には「資料を確認し、表を作った」と残っている。しかし、どの資料を使ったか、表のファイルはどこか、未確認の項目は何かが分からなければ、作業を再開しにくい。 この想定例が示すのは、会話の保存と、仕事の再開に必要な情報の保存には違いがあるということだ。
本稿では、2026年4月20日までの設計資料を手掛かりに、停止後も続ける仕事で残すものを考える。 継続性が必要なタスクでは、回答の正確さに加え、再開後に同じ作業を繰り返さず、残りを進められるかを確かめたい。
実行するプロセスと、復旧に使う記録を分ける
Anthropicの4月8日のManaged Agents設計記事は、セッションの記録、モデルを呼び出す処理、コードを動かす環境を分離した経緯を説明している。 処理が落ちても外部に残るイベントログを読み直して再開する構成であり、保存されたセッションとモデルの文脈窓も区別している。
これは「全部の履歴を毎回モデルに渡す」という設計ではない。 記録を残すことと、その時点の判断に必要な情報を取り出すことは別の仕事になる。 調査報告なら、全取得履歴を保存しておき、再開時には採用済みの資料、未解決の問い、次の作業を読み込む方法が考えられる。
ただし、ログが残っても、外部サービスへの操作が一度だけ行われたとは限らない。 送信は成功したが結果の記録前に停止した場合、再実行すると二重送信になり得る。 この場合は送信先の状態や操作IDを照合する必要があり、セッションを読み戻す機能だけでは解決しない。
進捗と成果物を、同じ版に結び付ける
Google ADKのStateの説明では、会話中に必要な値を保持する状態とイベント履歴を分け、状態の永続性は利用するSessionServiceに依存するとしている。 InMemorySessionServiceの状態は再起動で失われる。 「セッションがある」だけでは、再起動後にもデータが残るとは判断できない。
また、ADKのArtifactsは、ファイルなどのデータを名前と版付きで扱う仕組みである。 こちらも保存サービスを選ぶ必要があり、インメモリの実装はプロセス終了を越えて保持しない。 小さな進捗値と大きな生成ファイルを区別して保存する設計の例として読める。
調査報告に戻ると、進捗には「比較表の第2版を作成、2項目は未確認」と残し、同じ第2版のファイルを参照できるようにする。 「表は完成」とだけ書いて古いファイルを渡すと、次の実行が誤った地点から始まる。 私の提案は、次の作業だけでなく、入力資料と成果物の版、未確認事項も一緒に引き継ぐことだ。
停止位置を変えて、再開後の結果を比較する
再開を評価するには、中断しない実行と、中断を挟む実行で同じ完了条件を使う。 調査報告なら、資料取得後、表の保存後、進捗の更新前といった位置で止めて試す。 ファイルが開けるだけでなく、未確認事項が残り、検証済みの内容が維持され、不要な再取得や重複送信がないかを見る。
時間をまたぐ仕事では、保存した情報が古くなる条件も入れたい。 前日に取得した価格や公開状況を翌日の報告に使うなら、再確認する項目を決める。 過去の文脈を保つことと、変わった事実を読み直すことを両立させる必要がある。
こうした確認を通すと、保存すべきものがタスクごとに見えてくる。 短い質問への回答に同じ仕組みを一式導入する必要はない。 複数回に分けて進める仕事では、どこから再開し、何を確かめ直すかまで定義することが、継続性を評価する出発点になる。