翌週の数字を差し替えられる資料にする
AIが作ったスライドは、見た目が整っていても、担当者が必要な修正をできるとは限らない。 たとえば週次報告で、売上の数字とグラフだけを翌週更新したいとする。これは説明のための想定例である。 ページ全体が一枚の画像なら、文字を選択して数字を直す操作はできない。元の素材を修正して再出力するか、画像を加工する必要がある。
一方、タイトルがテキスト、グラフがデータを持つグラフ要素として残っていれば、それぞれを更新する手順を組める。 本稿では、生成サービスを選ぶ前に「誰が、どのアプリで、何を直すか」を決めることを提案する。 生成直後の見栄えに加えて、次の修正まで試すと、納品形式の適否を判断しやすい。
画像、SVG、スライド要素では直せる箇所が違う
背景のイラストは、一枚の画像で渡しても困らない場合がある。 しかし、頻繁に変わる金額や注記まで背景に焼き込むと、文章の訂正にも画像の再作成が必要になる。 同じスライドでも、固定する装飾と更新する情報は分けて扱える。
SVGなら拡大しても輪郭を保ちやすいが、それだけで中身がPowerPointのテキストやグラフになるわけではない。 Microsoftの説明でも、SVG全体の塗りやサイズの変更と、図形に変換して一部分を変更する操作は区別されている。変換には環境の条件もある。 MicrosoftのSVG編集ガイドを踏まえ、実際の納品先で必要な編集ができるかを確かめたい。
スライド要素を個別に作る方法もある。 PptxGenJSのグラフAPIは、画像の貼り付けとは別に、系列データとオプションを渡してグラフを追加する。 定期更新のグラフなら、このようにデータと表示を結び付ける方式が候補になる。ただし、出力先での表示や編集結果までAPIの呼び出し成功だけで保証されるわけではない。
PowerPointでできる操作をSlidesにも期待しない
ファイル形式だけでなく、受け手の編集環境も指定する必要がある。 Google Slides APIのCreateImageRequestが受け付ける画像形式はPNG、JPEG、GIFであり、SVGを直接挿入する要求ではない。 PowerPointへのSVG挿入と同じ手順を、そのままSlides APIに移すことはできない。
先ほどの週次報告をSlidesで運用するなら、見出しや注記を編集可能なテキストとして作るか、画像を更新する工程にするかを選ぶ。 PPTXを経由する場合も、変換後に文字の折り返し、フォント、グラフ、配置を確認する。 「PPTXとして保存できた」は、受け手が予定した修正を行えることの確認にはならない。
生成結果と、その後の修正を別々に評価する
PPTAgentの研究は、参照資料を分析して編集操作を生成する方式を提案し、内容・デザイン・一貫性を評価軸にしている。 文章の正しさだけでは資料全体を評価できない、という問題設定は参考になる。 ただし、この研究の評価を、特定企業のテンプレートへの適合や担当者の修正時間の保証に読み替えることはできない。
実務向けの確認として、私は完成画像のレビューに加え、小さな修正課題を一つ通すことを勧める。 週次報告なら、元データの一値を変え、グラフを更新し、注記を訂正し、受け手のアプリで再び開く。 表示の崩れと数値の不一致に加えて、担当者が生成環境に戻らず直せるかを確認する。
毎回再生成する資料なら、個別編集よりも再現できる生成手順が適している場合もある。 反対に、受け手が会議中に細かく直す資料なら、編集可能な要素を残す価値が高い。 選択の基準は、生成技術の新しさではなく、その資料に実際に起こる修正である。